ほぼ全ての海鳥はコロニーを形成して集団営巣する。集団営巣の進化・適応的な意義はこれまで様々に論じられてきたが、コロニー内の遺伝的社会構造やその機能についてはほとんど検証されてこなかった。数千~数万つがいからなる海鳥のコロニーは、 地形等によって明確に区分されたサブコロニーに分かれている。ウミネコを対象とした講演者の研究により、個体間相互作用を通じて遺伝的利益が授受されやすいサブコロニーは、相対的に血縁度の高いオスによって 構成されていることがわかった。なかでも利他的な個体間相互作用が生じやすい半径数メートル範囲内の近隣巣のオス同士は血縁者(親子、兄弟)である確率が高かった。さらに、隣接巣に血縁者が含まれる場合、オスは高い攻撃性を示して捕食者や同種の侵入者を積極的に排除し、自身だけでなく隣接巣の繁殖成功度も上昇させていた。ウミネコは複数階層からなる父系社会をつくり、その社会は階層ごとに異なる機能を有しているのかもしれない。