本年2016年は、「山岳年(Year of Mountains)」ともいえる記念の年です。マナスル峰(8163m)の初登頂から今年でちょうど60年の節目を迎えます。1956年5月9日、日本人による唯一のヒマラヤ8000m峰の初登頂という快挙がありました。また、本年から8月11日が「山の日」という国民の祝日になりました。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としています。
こうした機会に、ヒマラヤ登山や、そこから派生した学術探検において、京都大学がパイオニアとして果たした役割を広く一般に紹介いたします。 展示物としては、マナスル初登頂の道を開いた、いわゆる「西堀書簡」の全容を本邦初公開します。1951年、西堀栄三郎が、マナスル登山許可を得るため、日本人として戦後初めてネパールに入りました。政府要人と交渉した経過を、京都の今西錦司あてに送った報告の手紙類を「西堀書簡」と称します。そこには当時まだ占領下にあった日本が、アジアの国として唯一8000m峰に初登頂するに到る端緒が克明に記録されています。さらに、1953年にマナスル初踏査隊を率いて登路の発見をした今西の手書き原稿など、貴重な原資料を展示します。
日本山岳会の隊員としてマナスル初登頂を果たした今西壽雄隊員は、京都大学農学部の卒業で、京都大学学士山岳会の会員でした。のちに日本山岳会会長も務めています。マナスルに初登頂したときの貴重な写真や、当時の新聞記事のパネルなども展示します。
本企画展と連動して、百周年記念時計台ホールの京大サロンで「ブータンの山と文化」と題した写真展(7月1日~8月31日)を開催しています。また8月6日には百周年記念ホールにて、記録映画「マナスルに立つ」のデジタル版上映会を開催します。