前回の水族館大学2では、水族館におけるイルカの飼育と紹介方法について水族館の飼育担当者と大学の研究者がネタを出し合い、次世代型の新たな見せ方はないのかと話し合った。しかし、残念ながら新たな手法やその糸口を見出すのは困難で,イルカをめぐる環境の複雑さを思い知ったのだった。しかし、両者の間で様々な意見がだされ、問題点を共有できたことでそれなりの評価を得たものと考えている。さて、今回の水族館大学では、前回の結果を踏まえ、再度、水族館でのイルカ飼育の未来について、水族館、研究者、さらにはほかの動物とかかわっている研究者の考えを聴いて、議論してみたいと考えている。
水族館でイルカを飼育することの是非について、現在ほど活発に論じられたことはかつてなかった。欧米や動物愛護団体から投げかけられたのは、自然界のイルカを追い込み網で捕獲することへの非難であったが、それとともに高度な知能を持つ動物の閉鎖空間での飼育に対する批判も一部に噴出した。水族館に所属する人間は、飼育されたイルカが幸福ではないと一度も感じたこともないし、むしろ、市民の海の動物への興味を喚起するためには必要だと感じている。しかし、旧態依然としたイルカショーだけでは、国際社会や市民の理解を得るには、すでに限界にあると感じ始めている。今回は、水族館のイルカトレーナーのこだわりと本音、そして水族館の新たな取組、そして水族館のイルカを利用している大学の研究者にそれぞれの立場を話してもらい、今後、日本の水族館のイルカ飼育がどのように世界をリードしていくのかを話し合う予定である。
日本のウミガメに関する学問や保全はこの20年で飛躍的に進歩したと言われ、海外の関係者からも評価は高い。その理由としては現場のボランティアと水族館、そして大学の研究者がうまく協働したからだともいえる。しかし、この協働関係が評価されたことはない。今回は小笠原、屋久島などウミガメの産卵地に視座をすえ、この協働関係を振り返り、反省点を後世に残すことを目的としている。