霊長類学が京都大学から生まれたのは、フィールドワークすなわち野外研究という京都大学の伝統に深く根ざしている。初登頂を目指すパイオニアワークの精神は、京都大学の野外研究の旗印だといえる。京大にしかない京大だからこそできる明確な貢献として霊長類学があり、その蓄積の上に「ワイルドライフサイエンス」という新興の学問領域が展開しつつある。チンパンジーやゴリラやオランウータンだけではない、ゾウやライオンやその他の生態系の頂点に立つ大型の動物が、森林伐採や開発によって絶滅の危機に瀕している。かれらを救うことが即、生態系の全体の保全につながり、生物多様性の保全につながる。単にそれを学問として追及するだけでなく、眼に見えるかたちでの日本の貢献がいま問われている。そうしたオンリーワンの人材育成が本リーディングプログラムの特色である。また、これまで大学院教育は研究科が中心に担ってきたが、それを一歩踏み越えて本リーディングプログラムでは、生物学専攻を主幹とするが、プログラムの実施は野生動物研究センターを中心として、こころ、からだ、くらし、ゲノムの総合的洞察力をもって、よりグローバルな人材を育成することを基本にする。すなわち、研究所が視点を変えた大学院教育改革の発展型を模索する試みである。